2019年に成立した改正医薬品医療機器等法(薬機法)により、令和3年8月1日から「地域連携薬局」及び「専門医療機関連携薬局」の認定制度が施行されます。
全国に約60,000店舗あると言われる薬局が、今後在宅医療に力を入れたり、オンライン化、DX化していったりする中で、より良い医療の実現のために様々な施策が行われています。
こうした流れを受けて各薬局では認定要件を満たすための研修などの育成に力を入れています。
今後薬局はこうした専門性を持つことが期待されています。
今回はそんな新設された認定制度について解説します。
認定制度新設の背景
今回、認定制度が施行されるのには、以下のような背景があります。
人口推移と高齢化
日本は人口の減少と高齢化が進んでおり、2060年には人口は9,000万人、高齢化率は40%を超えると言われています。
そういった医療や介護を受ける人が、住み慣れた地域で自立した生活を送れるように医療や介護等の包括的な支援体制が望まれています。
「人生100年時代」と言われ、高齢者が高齢者に介護する「老老介護」も大きな問題になっています。
その波が今後も加速していくことを考えれば、地域全体の包括的な支援体制の実現が今後より必要となるでしょう。
こうした地域全体の包括的な支援体制を「地域包括ケアシステム」と呼びます。
医薬分業の更なる発展
現在多くの患者さんが門前薬局で薬を受け取っています。
しかし、今後、高齢化が進む中で、多剤・重複投薬の防止等のためにも患者さんが、どの医療機関を受診しても身近なかかりつけ薬局に行く体制が望ましいと言えます。
患者さんの安全面からも薬局の専門性の強化が求められています。
「門前薬局ではなく面薬局」「対物から対人へ」「オンライン服薬指導の解禁」など、患者さんから選ばれる薬局づくりが国の施策としても進められています。
そのような点から、今回の地域連携薬局や、専門医療機関連携薬局の新設は新たな風を送り込むと言えるでしょう。
地域連携薬局とは
「地域連携薬局」とは「入退院時や在宅医療に他医療提供施設と連携して対応できる薬局」のことを指します。
主な認定要件としては、
・関係機関との情報共有
・夜間・休日の対応を含めた地域の調剤応需体制の構築・参画
・地域包括ケアに関する研修を受けた薬剤師の配置
・在宅医療への対応
・麻薬の調剤応需体制の整備
・無菌製剤処理を実施できる体制の整備
などが挙げられます。
ただし、このあたりは、地域の実情にもよります。
夜間・休日の対応は、近隣薬局と当番制にしても良いことや、無菌調剤についても他の薬局との共同利用が許可されていたりします。
地域連携薬局として申請する場合、各々の要件を改めて確認が必要です。
医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律の一部の施行について(認定薬局関係)
https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/000731165.pdf
また、2016年から本格的に開始されている健康サポート薬局との似ている部分が多いと感じる方も多いと思います。
地域連携薬局は、入退院時の医療機関への情報提供、麻薬や無菌調剤といった在宅医療に応じられる体制等、「病気になった後」に重点が置かれています。
一方、健康サポート薬局は地域住民の健康に関する相談や、一般用医薬品の取り扱い等「未病・予防」が重視されている点で違いがあります。
専門医療機関連携薬局とは
「専門医療機関連携薬局」とは「がん等の専門的な薬学管理に他医療提供施設と連携して対応できる薬局」のことを指します。
主な認定要件としては、
・関係機関との情報共有
・学会認定等の専門性が高い薬剤師の配置
・利用者が座って服薬指導等を受ける個室等の設備の設置
・開局時間外の相談応需体制、休日夜間の調剤応需体制、麻薬の調剤応需体制等の整備
・専門的な医療の提供等を行う医療機関との会議への定期的な参加
などが挙げられます。
地域連携薬局等について薬局から寄せられたQ&A(一部抜粋)
Q:地域包括ケアシステムの構築に資する会議について、Web 会議システムを使った会議も認めていただきたい
A:地域包括ケアシステムの構築に資する会議については、オンラインにより行われるものでも差し支えないと考えます。
Q:地域連携薬局の基準は、人員や設備ではなく、地域とのネットワークが図られているかを重視するべきではないか。
A:地域連携薬局においては、地域における他の医療提供施設との連携体制を構築していることが重要であり、地域包括ケアシステムの構築に資する会議に継続的に参加することを基準としています。
Q:地域の医療機関に勤務する薬剤師その他の医療関係者に対し、利用者の薬剤等の使用情報について報告・連絡を行った実績を求めているが、具体的な内容如何。また、オンライン資格確認の普及が進み、患者の薬剤情報も容易に確認ができるようになった場合どういったものが実績に換算されるのか。
A:利用者の薬剤等の使用情報の考え方や具体例については、通知等で示します。オンライン資格確認の普及により、利用者の薬剤情報が確認できるようになったとしても、医療機関へ提供すべき情報は利用者の服薬状況等、薬剤自体の情報のみではないことから、このような情報を提供することを実績とすることが想定されます。
その他Q&Aはこちらをお目通しください。
「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則の一部を改正する省令」に対して寄せられた御意見について
https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000213121
今後の薬局とは
今回は令和3年8月1日から「地域連携薬局」及び「専門医療機関連携薬局」について解説しました。
このように薬局は、今後より専門性を持つことを期待されています。「地域包括ケアシステム」を実現させるためにも、各医療機関との連携が必要になります。
薬剤師それぞれの研修なども必要になってくるでしょう。
従来の「立地」で選ぶ薬局から「体験」で選ぶ薬局に変わりつつあります。
そのためにもより充実したサービスと薬局としての変革が求められます。
今回の改正医薬品医療機器等法(薬機法)では、他にもオンライン服薬指導の解禁や、服用期間中のフォローアップの義務化なども盛り込まれています。
近年、これらの機能も搭載した電子薬歴やツールも多数あるので、現行のシステムでは対応しきれないという薬局は、一度検討しても良いかもしれません。